産業科学研究所は、大阪を中心とする関西財界や有志の「産業に必要な自然科学の基礎と応用」に関する研究機関を大阪に設置したいという強い要望を背景に、「自然科学に関する特殊事項で産業に必要なものの基礎的学理及びその応用の研究」を目的とし、昭和14年、現在の大阪大学の前身である大阪帝国大学に設立された。当初は3研究部門でスタートしたが、研究所の歴史を刻みながら発展し、1980年代末には21研究部門3附属研究施設からなる国内でも有数の理工学総合研究所に発展し、電子工学、情報科学、金属及び無機材料科学、有機化学、生物化学、高分子化学、放射線科学などの分野で広範囲に研究を進めた。


 平成7年に「産業に必要となる先端的な事項で、材料、情報及び生体に関するものの総合研究」を目的として24研究分野からなる6大部門と材料解析センター、高次インターマテリアルセンター、放射線実験所の3附属施設を持つ研究所に改組し、材料・デバイス、情報・知能、生体・医療の3領域で学際的かつ総合的な研究を行い、それらを融合した新しい科学の創出を目指す研究所の性格を明らかにした。


 平成14年度に、放射線実験所と高次インターマテリアルセンターを改組・拡充し、全く新しい視点から産業科学ナノテクノロジーセンターが発足した。平成15年に竣工したナノテクノロジー総合研究棟は、他大学、他研究機関に対してもナノサイエンス研究支援を行う、「阪大複合ナノファウンダリ」が設置され、平成14年度から18年度までは、当研究所は工学研究科・原子力工学専攻の協力を得て21世紀COEプログラム「新産業創造指向インターナノサイエンス」を推進し、平成18年度までに韓国、フランス、アメリカにブランチを設立し、グローバル化を進めた。
 平成17年~21年度までは、特別教育研究経費により東北大学多元物質科学研究所と連携を組み、国立大学法人化後初の大学附置研究所間連携プロジェクトとして、新産業創造物質基盤技術研究センターを推進した。平成19年~21年度は、全国4大学附置研究所を結ぶ“ポストシリコンデバイス創成”を目指したアライアンスを推進した。また、産学連携を促進するため、平成17年に新産業創成研究部門を発足、平成18年に産学連携室を設置し、国内外を問わず情報を発信している。


 平成21年4月には、新たな学際融合研究の展開、ナノサイエンス研究の強化、産学連携と大学院教育への貢献、国際共同研究の一層の推進を目指して、14年ぶりの大改組を行い、第1研究部門(情報・量子科学系)、第2研究部門(材料・ビーム科学系)、第3研究部門(生体・分子科学系)の3大研究部門へと再編し、産業科学ナノテクノロジーセンターを6専任研究分野に拡充し、時限を撤回した。新たに、産業科学連携教育推進センター、国際共同研究センターを設けるとともに、材料解析センターを電子顕微鏡室と合体して、情報や生体の解析も含む、総合解析センターへと改組、量子ビーム実験室をナノテクノロジーセンターから独立させて量子ビーム科学研究施設とし、共同研究の一層の利便化を図った。
 産学連携の一層の推進のための拠点として、産研インキュベーション棟(5階建て5,000㎡)を平成22年3月に竣工し、阪大で初めてのオンキャンパス型企業リサーチパークをはじめ、新たな産学連携とプロジェクト研究の拠点として活動を開始している。


 また、平成22年4月、産研を拠点本部として、北大電子研、東北大多元研、東工大資源研(現化生研)、九大先導研の5大学附置研による「物質・デバイス領域共同研究拠点」が発足し活動を開始した。これは、我が国にこれまで存在したことのない大がかりな全国を縦断する共同研究拠点である。また、本拠点を足場として、平成22~27年度には、5大学附置研の大型共同研究プロジェクト「附置研究所間アライアンスによるナノとマクロをつなぐ物質・デバイス・システム創製戦略プロジェクト」を実施し、その実績を基盤として、平成28年度から「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」を発足している。


 平成23年11月には、世界最大のナノテク研究機関imecと産研との共同研究契約を締結し、所内にimecオフィスを設置した。さらに、国際連携ネットワーク強化のため、平成29年2月、ベルギーのimec内に「ISIR imec center」を開設した。
 平成25年11月には、文科省「革新的イノベーション創出プログラム」の拠点の一つに大阪大学が採択され、その中心研究機関として産研が活動を開始している。


 産業科学研究所は、我が国を代表する総合理工型研究所として、また総合理工型研究所の全国ネットワークの中核として、さらには新しい産学連携の旗手として、今、新たな発展の道へと踏み出したところである。